外壁の塗り替えの際は「景観法」に気をつけよう!
外壁の塗り替えの際は「どんなテイストにしようか」とワクワクする人も少なくないでしょう。しかし、外壁の色は地域によっては「景観法」で決まりが定められていることがあります。そこで今回は、景観法の概要や実際の事例、外壁の塗り替え時に気をつけるべきポイントをまとめて解説します。ぜひご一読ください。
景観法が施行された背景
景観法は2005年に制定された法律で、都市や農山漁村など全国各地で良好な景観を形成することを目的としています。
各地方自治体に対して景観計画の策定を促し、美しく風格ある国土づくりや潤いのある豊かな生活環境、個性的で活力ある地域社会の実現を支援することを目指しています。
景観法制定の背景として、1980年代以降、地域ごとに特色を活かした独自の条例による街づくりが進められてきたことが発端です。しかしこの取り組みは、法的拘束力に欠けるため景観保全の実効性が不十分でした。
そして、この状況を打開するために、全国統一的な枠組みとして景観法が必要となったのです。
特徴的なのは、景観法自体が直接建物の外観を規制するものではなく、各自治体が景観行政団体となって独自に景観計画や景観条例を策定し、地域の実情に合った取り組みを推進する形をとっている点です。
景観計画は街の景観を保全または向上させるための基本計画で、区域の指定や行為に対する届出基準の設定、届出対象への勧告などが定められています。
景観行政団体は景観計画を主体的に策定・実施する役割を持ち、政令市や中核市、都道府県は自動的に景観行政団体となり、その他の市町村も都道府県知事の同意により景観行政団体になれます。
景観条例は各地域の特性に合わせた街並みや自然環境の保全を目的として地方自治体が制定するもので、景観形成における重要な手段の一つです。
景観計画の実際の事例を紹介
景観法に基づき、全国各地で地域の特色を活かした具体的な景観計画が実施されています。
以下では、その具体的事例をいくつか見ていきましょう。
東京都の事例
東京都では「光を使った街づくり」をテーマに、2018年から夜間景観の形成に関する新方針を打ち出しました。
眠らない街と称される東京では高層ビルや街路のライトアップが魅力ですが、過度な照明演出を抑えて環境に配慮した照度管理を進めるとともに、各エリアの個性を引き立てる夜間照明計画を推進しています。
京都市
京都市は全国的にも厳しい景観規制で知られ、建物の高さ制限、眺望景観保全、屋外広告規制の3つを柱に歴史的景観を保護しています。
とくに屋外広告に関しては、市全域で屋上看板や点滅式・可動式照明の設置を禁止しているほか、看板のサイズやデザイン基準を細かく設定しています。
さらに、良好な屋外広告物に対して表彰や補助金を設けるなど、民間事業者も巻き込んだ景観保全に取り組んでいるのが特徴的です。
倉敷市
倉敷市では、美観地区をはじめとした水路や歴史的景観を守るために2021年に景観計画を改訂し、建築物のデザインに対する指標をより詳細に規定しました。
工事完了後に完了届の提出を義務付け、基準に適合しない場合は変更命令を出せるようになったのです。自動販売機の外観にも配慮が求められ、景観を損なわないよう赤などの派手な色を避け、背景に調和する白や茶色など落ち着いた色合いにすることを義務付けています。
外壁の塗り替えの際に気をつけること
外観の塗り替えやリフォームを行う際には、地域ごとに定められた景観条例やルールを十分に理解し、それに沿った色やデザインを選ぶことが重要です。
とくに外壁の色は、家全体の印象を大きく左右するため慎重な選択が求められます。リフォームで色選びに迷った場合、施工会社に相談すれば、地域の景観条例に適合した色を提案してもらえることが多いです。
しかし、最終的な決定は施主自身の判断となるため、細部まで注意を払う必要があります。住宅の外観は壁だけでなく、窓枠や屋根、配管、玄関扉など複数の要素が組み合わさって成り立っています。
外壁の色は比較的自由に選べる場合が多いですが、窓サッシや配管などはグレーや黒、茶色といった限られた色であることが多く、これらとの色の調和を考慮することが欠かせません。
複数の色を比較検討するときは、配管や窓枠の色との組み合わせを基準に選ぶことで、よりバランスの取れた外観が実現しやすいです。
さらに、壁材や塗料の素材サンプルを選ぶ際には、室内で小さなサンプルだけを見て決めるのは避けたほうがよいでしょう。これは、小さいサンプルでは実際の仕上がりの明るさや質感が把握しにくく、完成後にイメージと異なることがあるためです。
実際には、壁一面に素材を適用すると、サンプルよりも明るく見える傾向があるため、その違いを認識しておくことが重要です。また、素材サンプルを屋外に持ち出し、実際の住宅の壁に当てて太陽光の下で確認することが推奨されます。
これにより、昼間の自然光の影響や周囲の環境、とくに庭の植栽との相性を実際に確かめることができ、色や質感がより正確にイメージできます。
こうした事前の確認作業は、完成後の後悔や手直しを防ぎ、住まいの景観と調和した外観リフォームを成功させるために欠かせない工程と言えるでしょう。
全体として、外観リフォームにおいては地域の景観条例を踏まえつつ、住宅の細部との調和や自然環境とのバランスを考慮し、十分な検討と確認を経て色や素材を決定することが望ましいです。
まとめ
外壁の塗り替えは、自宅の印象を大きく変える重要なリフォームですが、地域ごとに定められた「景観法」や景観条例を守ることが欠かせません。景観法は2005年に制定され、各自治体が街の美しさや地域性を活かすための計画を策定し、歴史や自然環境を守りながら個性的で活力あるまちづくりを推進しています。東京都や京都市、倉敷市などでは、それぞれの特色に合わせた具体的なルールや方針があり、例えば夜間照明の調整や屋外広告の規制、建築デザインの細かな指標が設けられています。外壁の色選びでは、窓枠や配管との調和を意識し、屋外で素材サンプルを実際に確認することが大切です。こうした配慮が、地域の景観と調和しながら、満足度の高いリフォームを実現します。景観法を理解し適切に対応することで、美しく豊かな住環境づくりにつながるでしょう。

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